3 やきもちでいっぱいなの
昨日の兄の言葉に、2階の自室の窓から道路を見ていた遥奈の目に、制服姿の兄と女子高校生が歩いているのが見えた。その女子は、肩まで伸ばしたさらさらのストレートの髪がさわやかで、すこしふっくらした頬が可愛らしさを強調していた。表情は控えめで大人しそうだ。
(痩せてるわたしと違って、ぽっちゃり型だけど可愛い)
と遥奈は思った。
なんと、二人は並んでこの家のドアの前まで来た。
(うそ、こんな早い展開、聞いてないよ!)
「遥奈~」
兄の声に、遥奈はあわてて階段を降りていくと、兄の隣に先ほどの彼女がいた。
「高校の友達の草野さんだ」
姫乃は、はにかみながら
「草野です、よろしくお願いします」
と言う。やはり可愛い。
(優しそうだし、可愛いし、わたし勝てない)
しかし、我慢して言った。
「遥奈です。兄がお世話になってます。ゆっくりしていってくださいね」
2階に戻る姫乃に
「優しくて可愛い妹さんね」
という姫乃の声が聞こえた。
(わたし・・・ 優しくも可愛くもない・・・ だって、おにいちゃんを取られたくなくて、やきもちでいっぱいなの)